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「billboard classics ASKA premium ensemble concert -higher ground-」全国ツアー・京都公演 雑感【ネタバレ有り】

(写真1)京都コンサートホール内のツアーポスター

【2019年12月19日更新】
メモ書き状態だったブログ記事を加筆修正。


はじめに

2019年12月10日に京都コンサートホールにて初演を迎えた「billboard classics ASKA premium ensemble concert -higher ground-」。観終えてから雑感を書き綴りたい欲を抑えきれないため、ブログ記事としてここに公開したい。


セットリストに関しては、記憶から抜け落ちていた曲があったり、覚えていても順番が入れ替わっていたり、そもそも完全に知らなかったりした曲もあったりしたため、下記のブログを参考に補完しました。

tuneoka.hatenablog.com

https://kojinteki-niwa.com/ca/ca-blog/aska-higher-ground-kyoto/kojinteki-niwa.com

目次にセットリストの情報が掲載されているので、ネタバレを回避したい方は引き返してください。




















目次




全曲感想

新曲A(一部分)

ライブのはじまりは、来年2020年3月発売予定の新アルバムに収録されているであろう新曲からスタート。
「We Love Music」というフレーズを繰り返しており、ひょっとしたらこの後に歌うのは……と想像したところで次の曲へ。

僕はMusic

新曲Aの流れを引き継いで「僕はMusic」。ライブという形で改めて聴いて、この楽曲のキャッチーさを再確認できた。
自分は音楽そのもの、まさに「歌になりたい」人間だということを体現していると言える。

HELLO

イントロの切ないストリングスをビルボードの弦楽アンサンブルが担当しており、ASKAがブログで繰り返し言及していた「三位一体」の迫力を体感することになる。
開口一番、お馴染みの「待たせたね~」が会場に響き渡る。否応なしに盛り上がる楽曲。

天気予報の恋人

先ほどの「HELLO」で興奮が冷めやらぬ中で歌われる安定の一曲。外れようがない。
冒頭の4曲で既に満足感いっぱいの状態に。

Fellows

ASKA「君が、作詞作曲してみな!」と題してYouTubeにカラオケ動画をアップロードした時にも思ったが、サウンドが格好良い楽曲。
今回の「Fellows」や今年初めのライブ(「ASKA CONCERT TOUR 2019 Made in ASKA - 40年のありったけ -」)のセトリに組み込まれていた「未来の勲章」だけではなく、アルバム『Black&White』の「塗りつぶしていけ!」や「Black&White」、アルバム『SCRAMBLE』の「SCRAMBLE」や「僕の来た道」のような、ざっくりとしたバンドサウンドの楽曲を今後のライブでも幅広く取り上げてほしい。

修羅を行く

サビに到達するまでのうねりと、サビに到達してからの盛り上がりが印象に残る一曲。
昨年のツアー(「billboard classics ASKA PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2018 -THE PRIDE-」)のセトリにも入っているくらいなので、ASKAのお気に入り、今歌いたい楽曲なのだろう。

しゃぼん

サビの最後の歌詞「ああそれでも」の辺りを歌い上げるのはさすがにキツそうだった。キーの高さやシャウトの負担を考えれば致し方ないが。
今回のライブで唯一喉の調子が気になった曲。

はじまりはいつも雨

一番を歌い終わるとすかさず拍手が起こる。それだけのヒット曲ということなのだろう(個人的には最後まで聴き通したい……)。

good time

「はじまりはいつも雨」に続いてしっとり系楽曲。
実を言うと、歌唱後のMCで説明がなされるまで楽曲タイトルが思い浮かばなかった……。2000年代のASKAソロ曲(『SCENEⅢ』の主な収録曲)は美メロであることは間違いないが、どうしてもまったり感が強めだったり、時折顔を覗かせる輪廻転生思想がくどく感じてしまう瞬間があったりして、あまり聴き込んでいなかったという言い訳をここで。
久しぶりにライブで聴いて良曲だと再確認できたのは一つの収穫か。本人の弁によれば歌いたくなるスイッチが入った、とのこと。
MCでこのシングルはあまり売れなかったと自嘲していたが、現在は削除されてしまったASKAのブログ記事によれば、当時在籍していたYAMAHAによって新設されたレコード会社の流通体制に問題があった模様。

帰宅

ASKAがソロでギターを弾き始めた時にもしや……と思ったら予想通り「帰宅」。ライブで聴きたかった一曲だけに、嬉しさがこみ上げてくる。
正直に言うとギターはそこまで上手ではないものの、有り余る歌の上手さで聴衆を説き伏せていく。
伴奏がほとんどなく声がダイレクトに伝わってくる。安直な言い方だが「歌の力」を体感できる。
終盤のストリングスはキーボードだった。今回のライブはビルボードストリングスとの三位一体が強みとなるのだし、何故そちらを起用しないのか気になった。
https://twitter.com/lovely_nanshi/status/1204397405908680704
同様の感想がツイートされていたので紹介。

Red Hill

「SAY YES」や「はじまりはいつも雨」のようなヒット曲は、一聴すると分かりやすそうでありながら実は複雑かつ難解であり、苦い良薬を甘い糖衣で包んでるようなタイプではないかと勝手に思っている。
その一方で「Red Hill」は、一聴すると格好良さが伝わってくるのだが、歌詞や曲の構成といった側面で分かりにくさが割とすぐに露出して、砂を噛んでいるような、掴みどころがどこなのか判然としなくなる感覚に陥る楽曲ではないか。
音楽理論武装した語り口を持てず、かと言ってASKAのような巧みな比喩が使えるわけでもなく、いたずらに意味不明な形容を重ねる説明になってしまった……。ややこしい話は抜きにして、「Red Hill」はライブで真価を発揮する曲だと強く実感した。真紅のライトに照らされて映えるステージ、何かに急かされるようなASKAの迫力ある歌唱が印象に残る。

歌になりたい

ブログでも言及されていたが、スマホを使ったライトアップ、本当にやって良かったのか……(自分はしなかった)。

you&me

デュエットのSHUUBIとの距離が心なしか近いような……。
客席側から「ヒュー」と囃し立てる喚声が湧き上がった時にASKAが「60歳超えてるから」と照れながら窘めていたが……くれぐれもセクハラオヤジにはならんといて……
ステージ前に移動する際にマイクを持ってくるのを忘れたりと、SHUUBIが若干緊張していたような。歌い始めると二人の世界に誘われる。

HEART

イントロを聴いて「まさか……」と心の中で呟く。紛れもない「HEART」。身体が高揚感に抗えない。
お馴染みのマイクスタンド芸をBメロで披露する度に客席から歓声が起こる。
こんなに盛り上がるナンバーが「YAH YAH YAH」を筆頭とした厚い壁に阻まれているのは勿体ないと切に感じた。今回のライブで披露したのは大正解。

新曲B

この楽曲も新アルバムに収録予定なのだろう。サビの「百花繚乱」のフレーズが耳に残る、ひたすら格好良いロックナンバー。
ライブで披露された2つの新曲の印象だけで判断すれば、今度の新アルバムも期待できそう。
リリースされた後はヘビーローテーションしたい一曲。

higher ground

ツアータイトルとして採用された楽曲。90年代後半のソロ活動で深化したアングラ感が上手く立体化されており非常に格好良い。

青春の鼓動

盛り上がらない訳がない。勿論ハーモニカはASKAが担当。
微笑ましい歌詞の中に放り込まれた一節 「嫌いな先生の写真を貼って / ボコボコになるまでダーツしたっけ」のインパクトが強い。

今がいちばんいい

アルバム『Black&White』で最初に聴いた時には、(良くも悪くも)ポルノグラフィティっぽさを感じた楽曲。「プッシュプレイ」や「ワンモアタイム」辺りのアップテンポなナンバーに、若干のダサさを加えた印象を抱いたと言えば分かりやすいだろうか。
三度目のライブでとうとうしっくりきた。ライブでのアレンジや楽曲の流れ・配置の効果かもしれない。

Be Free

実を言うと「自由になりなさい / 楽になりなさい」の一節が引っかかってあまり好きな楽曲ではなかったのだが、改めて聴いてみるとサビの旋律の美しさに気づけた。歌詞にはどこか重苦しい雰囲気が漂っているのに、サウンドとしては深み、温かみがある不思議な感覚。

新曲A

冒頭と同じ楽曲のフルバージョン。
ライブでも盛り上がるし、新アルバムでも聴き込みたい、「僕はMusic」の進化系のような一曲。


【アンコール】

一度きりの笑顔

アンコールの熱気をしっとりとクールダウン。
白状すると、他の人のブログ記事を読むまでタイトルが分からなかった曲。アルバム『Black&White』のボーナストラックであり、CDをiTunesに取り込んだ際に前のトラックの「Fellows」と一体化してしまったため、ほとんど聴き込んでいなかったのが仇となった……。

PRIDE

イントロのピアノを聴いただけでグッときてしまう。昨年の京都公演より断然歌い倒せている。

BIG TREE

アンコールのラストを締めくくるのは、まさかの「BIG TREE」。この楽曲をソロライブで聴けるとは。ただただ敬服するしかない。
90年代前半を彷彿とさせる声の伸びと、この10年くらいで深化した声の底力が合わさっており実に圧巻。今回の公演のベストアクトだろう。


全体的な感想

セットリストの良さ

ASKA本人が恐らく今歌いたい新曲(「歌になりたい」「修羅を行く」「今がいちばんいい」など)、ファン待望の人気曲(「HELLO」「HEART」「BIG TREE」など)、知名度の高さ故に外せない曲(「はじまりはいつも雨」「PRIDE」)が、ライブの中で上手い具合に配置されていた。聴き通してみるとトータルのバランスの良さを実感できる。
意外性のある楽曲(「帰宅」「HEART」「BIG TREE」辺り)のチョイスも巧みだった。
個人的には、好きなASKAソロ楽曲10曲セレクトの際に選んだくらいのお気に入りだった「帰宅」を生で聴けたため大満足。

MCのフランクさ

途中のトイレ休憩(今回は「もぐもぐタイム」は無し)を兼ねたタイミングでのMCのフリースタイル具合に驚いた。
まさか聴衆に「何か訊きたいことはある?」と投げ掛けて、その質問に答える形式を取るとは。
新アルバムの収録曲数のように「良い質問ですねぇ」と頷きたくなる場面もあった反面、進行が客席側に委ねられるので、このスタイルがツアーを通して続くならファンの良識が問われることになる。

ASKAの声とオケのバランス(の悪さ)

自分の座席の問題もあるかもしれないが、オケが大きすぎて肝心のASKAの声が聴こえにくくなる場面が時折あり、勿体なさを感じてしまった。
音響さえ良ければ今回のライブは申し分なかったと断言できる。




今後歌ってほしい曲

今回のライブでも「東京」の披露はなされず、その点では残念。全体的なセットリストの満足感からすればほとんど気にならないレベルではあるのだが。サビのキーの高さもあり、喉の調子と相談しているのだろうか。
アルバム未収録・配信限定シングル(新アルバムに収録予定の)楽曲の枠で言えば、2度のライブで披露された「修羅を行く」も悪くはないが、「虹の花」のようなポップで明るい曲もライブで聴いてみたいところ。


おわりに

行こうかどうか迷ってる人は是非とも行くべし。




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